冷戦時代の生き証人
馬祖列島は「閩江口の外に天から撒かれた真珠」と例えられているように、大小36の島々からなっています。
台湾本島の西北にあり、総面積は約29.6㎢。堅い花崗岩の地質や丘陵の起伏、曲がりくねった岩石の海岸が特徴で、6,000年前の新石器時代に人々が島で生活した遺跡も残ります。
中国大陸との最短距離は10kmも離れていないため、かつては対中戦線の最前線と位置づけられていました。1992年から戦時体制が解除され、南竿島、北竿島が観光の中心地になっています。
戦地観光のハイライトは、国共内戦時代の名残りである坑道やトーチカ、砲台など。
1968年、中華民国の国軍は攻防一体戦略の必要から、南竿、北竿、東引などの島々に「北海坑道」、「安東坑道」、「午沙坑道」を築きました。山の起伏に沿って、人力だけで掘った坑道の長さと保存の状態は世界一と言われています。
対岸の中国福建省の馬尾でも、冷戦時代の施設はほとんど保存されていない中、馬祖島や金門島のこうした戦跡群は、人類が記憶するべき戦争遺産として、また、平和の意味を考える教育のうえからも、「ある文明の存在を伝承する無二の存在」という世界遺産の登録基準3(ⅲ)にあてはまります。
現在、台湾では軍事と平和をテーマにした初めての戦争記念公園とされています。
貴重な閩東(びんとう)建築
このほか南竿島の芹壁集落には、伝統的な閩東(びんとう)建築が完全な形で残っています。
古くから流れ着いた沿岸の漁民や海洋民族が、花崗岩を切り出して丘陵に沿って建てた白い石造りの家並みは、藍一色の大海原との対比が美しく独特の景観を呈しています。これらの歷史的建築群は、世界遺産の登録基準の2(ⅱ)および4(ⅳ)に適合します。
なお現在は空き家の活用が進み,民宿や芸術家の工房としても使われ新たな価値を生んでいます。
このほか絶滅したとみられていた海鳥「ヒガシシナアジサシ」が、2000年にここ馬祖で発見されたことでも話題を呼びました。世界に50羽ほどしか生存していないとされるうち、世界最多の約20羽が馬祖で確認されています。