卑南遺跡と都蘭山

台鉄の台東駅に降り立つと、先史代の古墳が多く発見された都蘭山や謎の月形石柱が立つ遺跡公園が間近に見え、古代台湾の息吹を感じる。2023年5月にリニューアルした「国立台湾史前文化博物館」は展示に工夫を凝らし、約3万年前の台湾の姿や人類がどのように交流と工夫を重ねて文明を築いていったかが理解できる。特に石器時代の縄紋陶文化と、鉄器文化の発掘品が多く興味深い。

近くの遺跡公園にそそり立つ月形石柱は、1896年、台湾東部の人類学調査に当たった日本の学者 鳥居龍蔵によって初めて撮影された。その後1914年に総督府から調査団が派遣された報告書の中で、『旧アミ族部落の石柱』として紹介された。1930年代からは考古学者の鹿野忠雄が本格的な発掘調査を担当、1945年には台北帝大の國分直一や金関丈夫教授らの発掘調査によって住居の壁面や石材が見つかり、古代のアミ族の建築水準の高さが証明された。

1979年に第三級古跡、1988年には第一級古跡に認定される。

1980年、台湾鉄道部が台東駅を新設することになり、工事中に石棺が露出する地表が多く見つかる。そのため1980-1988年の間、台湾政府と台東県政府は駅の工事を止めて約1万平方メートルを発掘調査に充てた。

1988年に国立卑南史前文化博物館の構想が立てられ、1990年には新しい駅の近くに、石柱の丘を公園として保存することに決まった。

以後、台湾のみならず,人類文化の発展過程を学習できる遺跡と博物館は多くの来場客を集めている。2023年9月のリニューアルで、博物館2階は台灣原住民の権利獲得への歴史と文化の多様性をテーマにした展示場として注目されている。

出土した石板棺、玉器、大規模な集落遺跡は、台湾では最大規模のものです。世界各国を見てもあまり例がありません。学術的意義から見ても、先史文化を代表する卑南遺跡は、台湾西海岸で見つかった若干の先史文化遺跡と相通じるところがあるだけでなく、現存するオーストロネシア系諸族の文化とも関連するところがあります。台湾先史文化の全体的な発展の文脈から見ても重要な一角を占めるものであり、世界遺産登録基準第3項に合致します。

また、総体価値が及ぶ範囲が非常に広く、有形の遺構、出土品、標本もあれば、無形の文化遺産もあります。いずれも極めて高い総体価値と重要性を持つもので、世界遺産登録基準第6項に合致します。

引用元:卑南遺跡及び都蘭山-Potential World Heritage Sites in Taiwan (boch.gov.tw)

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