澎湖石滬群

石滬(せきし)とは、海中に玄武岩やサンゴを馬蹄形や半円形に積み上げた、台湾の伝統的な型の定置漁具です。満潮時には、積み上げた石垣の「囲い」が丸ごと海水に浸かりますが、干潮時には、「囲い」は狭い入口以外は海面上に現れます。そこで漁師は網を持って、この「囲い」の中に取り残された魚を捕獲します。

海中に石垣を積み上げて作るので短期間にはできず、日頃のメンテナンスも必要なので、代々引き継がれる「資産」であり、所有権を明らかにすべく日本統治時代には「石滬漁業権免許」の届け出が義務付けされていました。

石滬は澎湖諸島の各島にあり、現在約590 基が存在し、このうち約150基は現在も漁具として使用されています。そのうち、澎湖島北部に位置する吉貝島には92基(2006年台湾文化部調査による)あり、同島には「吉貝石滬文化館」もあります。

石滬は、石を海中に積み上げた「人工物」で、かつ接着剤等は一切使用していないので風や波で損傷しやすく、常に手を入れないと使用できなくなります。

しかし近年、他の漁法のウェイトが高くなり石滬による漁業利用が低下しました。結果、石滬の損耗が進み、多くの石滬に砂が堆積したり埋もれてしまったり、或いは一部の跡が残るだけになり、石滬として使用できなくなるだけでなく、その景観も崩壊しつつあります。こうしたことが、世界遺産登録基準第5項条に当てはまると考えます。

当会主催理事からの寄稿

「海を田畑とする」ことで、澎湖の先達は生活を維持させてきましたが、冬になると、海を強い北東モンスーンが吹き、出航の危険性が高まります。このため、先達は澎湖の海の黒い玄武岩と白い珊瑚礁を積み上げて石滬を築き、潮の満ち引きを利用して、魚群を石滬に誘い込んで捕まえました。こうすることで、波と闘わずにすむようにしたのです。これは地域の智慧の結晶であり、世界遺産登録基準第1項に当てはまります。石滬は石を浅瀬に積んで作った人工物で、風や波を受けて壊れやすいため、常に保護することで、使用できる状態を保てます。しかし、1970年代以降、ほかの漁法の収益が大きく増加し(石滬による利益が相対的に低下)、澎湖の漁民は徐々に石滬での漁業を重視しなくなりました。また、この十数年、人為的な海の環境の破壊が進み、澎湖の石滬の損傷状況も日を追うごとに厳しくなりました。多くの石滬で砂が堆積しているほか、一部の石滬は完全に埋もれてしまったり、一部の跡が残るだけになり、以前のような景観を再現するのが難しくなりました。こうしたことが、世界遺産登録基準第5項に当てはまります。

引用元:https://twh.boch.gov.tw/taiwan/intro.aspx?id=13&lang=ja_jp