棲蘭山檜木林

宜蘭県、新竹県、桃園市、新北市に跨がる「棲蘭山」の主役はタイワンヒノキベニヒノキです。

杉の原生林が残る「屋久島」の世界遺産申請と台湾の「棲蘭山檜木林」の候補地選定、その両方の調査に関わられた専門家によると、「棲蘭山は屋久島にも勝るとも劣らないポテンシャルをもっている」と明言されています。

 屋久島で樹齢1,000年を超える杉を“屋久杉”と呼称するように、台湾において1,000年を超える檜を“神木”と呼ぶそうですが、1,000年越えの巨木とともに、最も顕著な双方の類似点と言えば、霧に守られた海抜500~3,000mの急勾配の地に、多様な植物相の垂直分布が見られることでしょう。

 國立宜蘭大學 森林自然資源學系の陳子英教授によれば、棲蘭山霧林生態環境における植物資源463種のうち171種が台湾固有種で、台湾全土の固有種の3割を占め、氷河期からの遺留種も14種にのぼるそうです。更に、動物資源は哺乳類34種中10種が固有種。他にも鳥類・爬虫類・両生類、そして蝶などの昆虫も多くが固有種。正に棲蘭山は台湾、いや世界屈指の自然の宝庫だと言えるでしょう。

 一方文化的な価値も見落とすことはできません。棲蘭山檜林は、日本統治時代から初期民国に至る百年の林業史であり、人と森林が共存し、原生林を未来に受継いでいくために必要な、多くの情報を提供してくれています。尚、棲蘭山の檜は世界遺産「法隆寺」の修復の際の建材に使われていたとも言われています。日本と台湾、互いに木の文化を進化させてきた両国の繋がりを感じます。

ー会員誌「恵風」より抜粋

棲蘭山ヒノキ林は、中高海抜の山地に位置しており、峰が高く、谷は深く、十分な雨霧といった環境が、孤島のように閉鎖した生態環境を形成しているため、ヒノキ林帯には、チュウゴクイチイやタイワンスギ、ランダイスギ、タイワンイヌガヤなど、希少な裸子植物も生育しています。これらは、第三紀北極植物の遺存種で、長期間孤立した環境で変化したことにより、台湾固有の種類となりました。これら固有の針葉樹類の希少裸子植物群は、数千万年から1億年を経て変化したもので、「生きた化石」といえます。生態の進化における価値が、世界遺産登録基準第8項に当てはまります。

棲蘭山エリアの雨量は年平均5,000ミリに達した記録があり、この山地は1年のうち250日ほどが雨霧に覆われています。このように年中雨霧でおおわれている林地を植物学では、「雲霧林帯」といいます。このエリアの自然環境生態系は、学術界で「暖温帯山地針葉樹林群系」と呼ばれます。植物学ではこの群系を針葉樹混生群落、ヒノキ林群落の二つに大きく分けています。このうち、ヒノキ林群落は、海抜1,600-2,600メートルに分布し、温暖で湿潤、多雨のため、非常に多様な植物群落を形成しています。種の多様性といった点では非常に雑多で、中には、台湾では絶滅の危機に瀕していたり、貴重な種の多くが生息しており、この希少な針葉樹林で、タイワンツキノワグマやタイワンカモシカ、キョンといった大型の有蹄類が確認されています。ここは、台湾の希少野生生物の楽園となっており、研究と保護の対象として非常に価値ある点が、世界遺産登録基準第10項に当てはまります。

引用元:棲蘭山ヒノキ林-Potential World Heritage Sites in Taiwan (boch.gov.tw)

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