大屯山火山群

都会に近い大自然

台北市内から地下鉄で40分ほどの「北投温泉」をはじめ、多くの名湯を擁するのが、陽明山国家公園の一部にあたる大屯山火山群です。台北の北西部に位置する火山群には、大屯山(1,093m)、七星山(1,120m)、竹子山、面天山、向天山、大尖後山、紗帽山など20余りの峰々が連なっています。これらは、約280万年前に無数の地殻変動や噴火が繰り返されたのち、長い年月を掛けて現在の景観を生み出しました。

最も新しい噴火活動は約10万年から20万年前とされてきましたが、別の研究では5,000年前という説も出ているとおり、活動期に形成された成層火山や楯状火山、火口、噴気孔、火口湖、堰止湖、断層、滝が残っていて、大屯山火山群の生命力が、地下深くで温存されていることが見てとれます。

世界遺産の登録基準(ⅷ)(ⅸ)(ⅹ)に適合している

広大な一帯の、標高500メートルから900メートルには広葉樹のタブノキやオオバタブなどのクスノキ科が生いしげり、中標高地域に生育するタイワンリンドウやタイワンアセビ、ヤマグルマなども見ることができます。また、自然保護区だけあって、野生動物(タイワンザル、タイワンイノシシ、ハクビシン、トゲネズミなどの哺乳類や123種もの鳥類、23種もの両生類など)が数多く生息しています。

このように、約2,500万年前に形成された古い地層、火山作用による地質景観、地殻変動や地質変化の過程が見て取れることから「地球の歴史の段階的形成の見本」となるとされ、世界自然遺産登録の基準8(ⅷ)を適合していること。

また、大屯山火山群は氷河期を生き延びた植物と多種にわたる希少動植物が存在し、「動植物の進化の過程」において重要な地位を占めていることから登録基準9(ⅸ)にも適合していること。

さらに、変化に富んだ地形は絶滅危惧種を含む豊かな自然生態系を育み「生物多様性の生息保全地域」として登録基準10(ⅹ)に適合しているとされています。