阿里山森林鉄道

阿里山森林鉄道は、ヒマラヤの麓を走るダージリン鉄道、ペルーのマチュピチュへ至るペルーレイルと並び称される「世界3大登山鉄道」と言われています。

阿里山森林鉄道は、下関(馬関)条約により日本に割譲された台湾に調査隊が派遣され、1896年に阿里山の原始林が発見されたことに始まります。

1906年に「藤田組」が着工、同年嘉義駅から竹崎駅までの14.2kmが開通したが財政難により中断、1910年に台湾総督府が工事を引き継ぎ再開、1912年に二万坪までの66.8kmが開通、1914年には沼の平(現在阿里山駅)までの71.4kmが開通しました。

しかし 2009年8月の台風(八八水害)で多くの施設が崩壊、現在は嘉義から十字路までの55.3kmで運行されており、全線開通は2023年初頭の見込みです。

棲蘭山ヒノキ林は、中高海抜の山地に位置しており、峰が高く、谷は深く、十分な雨霧といった環境が、孤島のように閉鎖した生態環境を形成しているため、ヒノキ林帯には、チュウゴクイチイやタイワンスギ、ランダイスギ、タイワンイヌガヤなど、希少な裸子植物も生育しています。これらは、第三紀北極植物の遺存種で、長期間孤立した環境で変化したことにより、台湾固有の種類となりました。これら固有の針葉樹類の希少裸子植物群は、数千万年から1億年を経て変化したもので、「生きた化石」といえます。生態の進化における価値が、世界遺産登録基準第8項に当てはまります。

阿里山森林鉄道は、森林開発のために敷設された産業鉄道です。海抜100メートル以下の地点から海抜2000メートル以上まで駆け上り、森林鉄道であり、登山鉄道、高山鉄道でもあります。森林鉄道の開通は林業を発展させただけでなく、沿線の都市構造をも変えました。特色のある景観が多く生まれ、現在ではその中の10カ所以上が政府指定の文化景観や文化財、歴史的建築物に登録されています。

文化遺産登録基準の各項目に合致したこれらの普遍的価値に加え、阿里山のヒノキ霧林は世界でも貴重な森林資源です。阿里山森林鉄道の範囲内には、貴重な自然保護区のほかに、亜熱帯広葉樹林、暖温帯広葉樹林、中温帯針広混交林(ヒノキ林)なども連なっており、非常に特殊で多元的な生態環境を有しています。普遍的価値と登録基準を満たした数々の項目を総合して考えると、阿里山森林鉄道は複合遺産に合致する文化資産だと言えます。

引用元:阿里山森林鉄道-Potential World Heritage Sites in Taiwan (boch.gov.tw)

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