世界遺産 「富岡製糸場と絹関連遺産群」 ミニスタディーツアーに行ってきました!
2018年12月1日、世界遺産の登録の経緯を先達から学ぶべく、 2014年に世界遺産登録された「富岡製糸場と絹関連遺産群」へのミニス タディーツアーを開催しました。
「富岡製糸場」は明治維新後、開国によって西洋の近代国家の仲間入りが喫緊の課題であった当時の日本政府が、すでに輸出していた生糸を軸に貿易 拡大の為に、伝統的養蚕技術に代わる器械製糸技術を導入し、初の官営となる製糸場として誕生しました。 ここでの技術はその後日本各地に広がり、同じく大きく通風を重視した蚕の育成法を確立した「田島弥平の旧宅」、通風と温度管理を調和させた「高山長五郎の生家=高山社跡」、1905年に建造された国内最大規模の天然の蚕の卵の保存施設「荒船風穴」を含めた計4か所が構成資産として2014 年に世界遺産に認定されたのです。
一般的な観光は、上州富岡駅からアクセスの良い「富岡製糸場」ですが、今回は世界遺産登録の経緯を学ぶべく、丸一日かけて車にて「田島弥平の旧宅」、「高山社跡」も見学しました。
特に田島弥平旧宅では専門ガイド、高山社跡では、その歴史的価値・世界遺産としての価値を伝える”高山社顕彰会”の方にもお時間を頂戴し、世界遺産登録までの経緯や、ICOMOSや国が求める真正性を裏付ける民間での調査など、様々なお話を頂戴しました。
■世界遺産申請にはストーリーが重要。
富岡製糸場と絹産業遺産群の世界遺産登録は、当初案は10件の資産が候補でしたが、その中に前記の田島弥平旧宅は含まれていなかったようです。もともと産業革命にかかわる工場・建築物を主体として申請を検討していたものの、「絹産業を世界に広めた文化交流」「絹産業の 技術発展」を示す為には、建築物だけではなく、それらを構成するストーリーが必要となり、急遽、蚕の育成法を広めた田島家に 白羽の矢が立ったそうです(ちなみに高山社は世界遺産登録のためのICOMOS調査の際、満点の評価を受けたとのこと)。
最終的には、ICOMOSの調査により、 田島弥平の貢献や長五郎の影響が、日本だけでなく、アジア・ヨーロッパ・アメリカに影響 を及ぼしたという点が重視されての登録となりました。世界遺産の登録にはどのような登録基準を目指し、どのようにストーリー立てていくのかが重要だと感じたツアーでした。(飯島 記)